知的障害・境界知能と障害年金|検査結果と生活状況の整理

知的障害や境界知能がある方について、障害年金を考えるとき、知能検査の数値に目が向きやすいことがあります。

たしかに、WAIS-IVなどの心理検査結果は、本人の得意・不得意や認知機能の特徴を整理するうえで大切な資料になります。

しかし、障害年金では、IQなどの数値だけで判断されるわけではありません。

日本年金機構の障害認定基準でも、知的障害の認定では、知能指数のみに着眼するのではなく、日常生活のさまざまな場面での援助の必要度を勘案して総合的に判断することが示されています。

この記事では、知的障害や境界知能で障害年金を考えるときに、検査結果とあわせて整理しておきたい生活状況について説明します。


目次

知的障害・境界知能では生活上の支援量を整理することが大切です

知的障害や境界知能がある方では、日常生活の中で困りごとがあっても、本人がそれをうまく説明できないことがあります。

また、家族や周囲の支援があるために、外から見ると「生活できている」ように見えることもあります。

しかし、実際には、金銭管理、予定管理、通院、服薬、書類手続き、対人関係、就労継続などで多くの支援が必要な場合があります。

障害年金を考えるときは、「本人が何とかできているか」だけではなく、誰が、どの場面で、どの程度支えているかを整理することが大切です。


整理したいこと1 検査結果の意味

WAIS-IVなどの心理検査では、全体的な知的機能だけでなく、言葉の理解、見て考える力、記憶、処理速度などの特徴を確認できる場合があります。

ただし、検査結果の数値だけで、生活の困りごとがすべて分かるわけではありません。

確認したいのは、たとえば次のような点です。

・全体的な知的機能の水準
・得意なことと苦手なことの差
・説明を理解する力
・言葉で表現する力
・一度聞いた内容を覚えておく力
・作業の速さ
・複雑な手続きを理解する力
・生活場面でどのような支援が必要か

検査結果は、本人の状態を整理するための重要な資料です。

ただし、障害年金では、検査結果を生活場面と結びつけて整理することが大切です。


整理したいこと2 学校生活の経過

知的障害や境界知能で障害年金を考える場合、学校生活の経過は重要な手がかりになります。

確認したい内容は、たとえば次のようなものです。

・通常学級、支援学級、通級、特別支援学校の利用歴
・学習面での遅れ
・読み書き、計算、文章理解の困難
・先生から受けていた配慮
・友人関係の難しさ
・集団行動への参加の難しさ
・進学や就職時にどのような支援を受けたか
・療育や相談機関の利用歴

通知表、成績表、個別の支援計画、療育記録などが残っている場合は、当時の状態を整理する資料になることがあります。

学校生活の記録は、本人や家族の記憶を補う手がかりになります。


整理したいこと3 金銭管理の困りごと

金銭管理は、生活能力を考えるうえで重要です。

知的障害や境界知能がある方では、お金の計算そのものだけでなく、計画的に使うこと、必要な支払いを管理することが難しい場合があります。

確認したい内容は、たとえば次のようなものです。

・収入と支出を把握できるか
・公共料金や携帯料金を期限までに支払えるか
・必要なものと不要なものを判断できるか
・衝動的な買い物があるか
・だまされやすさや契約トラブルがあるか
・家族が財布や通帳を管理しているか
・本人だけで役所や金融機関の手続きができるか

「買い物ができる」ことと、「生活を維持できる形で金銭管理ができる」ことは別です。

家族が支出を管理している場合には、その支援内容を具体的に整理します。


整理したいこと4 家事・身のまわりのこと

日常生活では、食事、洗濯、掃除、入浴、服薬、片づけなどをどの程度自分で行えているかを確認します。

確認したい内容は、たとえば次のようなものです。

・一人で食事を準備できるか
・栄養バランスを考えられるか
・洗濯や掃除を継続できるか
・入浴、歯みがき、着替えが安定しているか
・薬を飲み忘れないか
・ゴミ出しや片づけができるか
・家族の声かけが必要か
・一人暮らしが可能か

本人が「できる」と話していても、実際には家族が準備していたり、声かけをしていたり、最終的に代わって行っている場合があります。

そのため、できるかできないかだけでなく、支援がどの程度必要かを整理します。


整理したいこと5 対人関係・コミュニケーション

知的障害や境界知能がある方では、会話そのものはできていても、複雑な説明を理解することや、相手の意図を読み取ることが難しい場合があります。

確認したい内容は、たとえば次のようなものです。

・説明を一度で理解できるか
・大事な内容を聞き漏らすことがあるか
・困ったときに自分から相談できるか
・冗談や遠回しな表現を理解しにくいか
・相手に合わせて話すことが難しいか
・人に言われたことを断れないことがあるか
・だまされやすさがあるか
・窓口や電話での手続きができるか

障害年金では、日常生活や社会生活の中で、どのような援助が必要かを伝えることが大切です。

対人関係の困りごとは、家庭内だけでなく、学校、職場、福祉サービス、地域生活の場面でも整理します。


整理したいこと6 就労状況

知的障害や境界知能がある方が働いている場合でも、どのような支援や配慮のもとで働いているかを確認する必要があります。

確認したい内容は、たとえば次のようなものです。

・一般就労、障害者雇用、就労継続支援などの働き方
・勤務時間や勤務日数
・仕事内容
・作業手順を覚えるまでの支援
・ミスが起きやすい作業
・上司や支援員の声かけ
・職場での対人関係
・欠勤、遅刻、早退の状況
・離職を繰り返していないか
・収入額や勤務の安定性

「働いている」という事実だけでは、就労上の困難は伝わりにくいです。

どのような配慮があって働けているのか、支援がなければ継続が難しいのか、仕事以外の生活が大きく崩れていないかを整理します。


整理したいこと7 家族や支援者の関わり

知的障害や境界知能で障害年金を考えるとき、家族や支援者の関わりを整理することは重要です。

確認したい内容は、たとえば次のようなものです。

・通院や服薬を誰が管理しているか
・金銭管理を誰が行っているか
・役所や病院の手続きを誰が行っているか
・就労先や福祉サービスとの連絡を誰が行っているか
・日常生活でどのような声かけが必要か
・感情が不安定なときに誰が対応しているか
・支援がないと生活がどう崩れるか

本人が生活できている背景に、家族や支援者の継続的な関わりがある場合、その支援量を言語化することが大切です。

「家族が手伝っている」だけではなく、どの場面で、どの頻度で、どこまで支えているかを整理します。


20歳前傷病の確認も大切です

知的障害の場合、幼少期から特性や支援の必要性があった方も少なくありません。

20歳前に初診日がある場合、障害基礎年金の保険料納付要件は不要とされています。

ただし、20歳前からの状態を整理するためには、学校、療育、医療機関、相談機関などの記録が役立つことがあります。

たとえば、次のような資料です。

・母子手帳
・通知表、成績表
・個別の教育支援計画
・療育手帳に関する資料
・心理検査結果
・児童相談所や相談機関の記録
・特別支援教育に関する記録
・過去の診断書や意見書

すべての資料が必要というわけではありません。

手元にある資料を確認し、幼少期から現在までの経過を整理することが大切です。


境界知能の場合に注意したいこと

境界知能は、知的障害の診断とは異なる扱いになることがあります。

そのため、境界知能という言葉だけで障害年金の対象になるかどうかを判断することはできません。

大切なのは、知的機能の状態に加えて、実際の生活でどのような支援が必要か、就労や対人関係にどのような困難があるか、医師の診断書にどのような状態が記載されるかを整理することです。

境界知能の方でも、発達障害、精神障害、知的機能の問題、生活上の支援量などが重なっている場合があります。

そのため、まずは診断名や検査結果だけで判断せず、生活状況全体を確認することが大切です。


心理検査は生活状況を整理する補助資料です

WAIS-IVなどの心理検査は、本人の得意・不得意や認知機能の特徴を整理するために役立つ場合があります。

また、Vineland-IIでは、コミュニケーション、日常生活スキル、社会性などの適応行動を整理する手がかりになる場合があります。

ただし、心理検査を受ければ障害年金が認定されやすくなる、というものではありません。

心理検査は、あくまで生活状況を整理するための補助資料です。

主治医の診断書作成の参考資料や、病歴・就労状況等申立書を作成する際の整理材料として活用できる場合があります。

未来のいえでは、主治医の許可が得られ、かつ有用と判断した場合に限り、心理検査を実施します。


未来のいえでお手伝いできること

社会保険労務士事務所 未来のいえでは、知的障害や境界知能で障害年金を考えている方に対して、生活状況の整理、心理検査の実施判断、診断書作成依頼の準備、病歴・就労状況等申立書の作成支援を行っています。

未来のいえでは、検査結果の数値だけでなく、学校生活、就労状況、金銭管理、対人関係、家族や支援者の関わりを整理します。

必要に応じて、WAIS-IVやVineland-IIなどの心理検査を通じて、生活状況を整理する補助資料を作成することもあります。

未来のいえでは、年金事務所への提出代行ではなく、ご本人やご家族が申請を進められるように、書類作成と手続きの整理を支援しています。

知的障害や境界知能で障害年金を考えている方、何から整理すればよいか分からない方は、無料面談にてご相談ください。


障害年金申請書類作成支援については、以下のページをご確認ください。
障害年金申請書類作成支援ページ

心理検査については、以下のページをご確認ください。
心理検査ページ

知的障害・境界知能で障害年金を考えている方は、以下よりお問い合わせください。
お問い合わせページ

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